歯科治療は日々変化をとげ、比較的新しい技術であるインプラントも、さらに革命と呼べる進歩をとげています。
インプラント先進国である欧米での研修参加を重ね、私たちは様々な技術を常に提示できます。
歯の悩みを抱える皆さまに「世界の今」の歯科医療技術を知っていただきたく、この本をまとめました。 ぜひご一読ください。
[青木 俊明 五十嵐 一 鈴木 仙一 脇田 雅文 共著]
定価 750円(本体価格714円+税36円)
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ポール・マロ博士が開発した4本(場合によっては4~8本)のインプラントを支点として片顎全体の固定式ブリッジを支えるオールオン4は、1本ずつのインプラント治療に比べ、患者様の負担を減らすことができる治療法です。入歯は口の形に添って作るので総義歯はアーチ型になっています。これを4本のインプラントが連結して四角の面を作り、その安定した力で支えることが重要なのです。
しかし「どうしても抜きたくない」という意思で残した歯があればオールオン4は適応外となります。その歯がまったく噛む能力を失っているのであれば、実体のないものを大切にして食べる喜びを取り戻す可能性をみすみす逃していることになります。
ほとんど噛んでいない歯、租しゃく能力のない歯は残す必要はありませんし逆に適当な時期に見切りをつけないと、どんどん顎骨を崩していくこともあります。さんざん骨を減らしてしまった後では、再生治療にかかる時間も費用も多くかかることになります。
ライオン歯科のするべき仕事のひとつには、いかにその事実を伝え歯骨が減る前に見切りをつけていただくかということになります。無理に合わない義歯を使い続けていると、1年間に1ミリは骨の減少が起こることもあります。その場合は10年放置していると1センチは減るという計算です。そう思うと「残すこと」にこだわるばかりが道ではないということが分かります。また、歯の寿命は50年ほどだと言われています。人間の寿命は加速度的に延びたのに歯は歯科治療の進歩にもかかわらず抜けたり虫歯になったりすることで喪失します。喪失寸前の歯は体の反応で異物として捉えられ炎症が起こったり痛みが生じたりします。
そのグラグラの歯を「残しましょう、保存しましょう」とこだわることで、結局骨まで喪失してしまうのです。
なぜアメリカがインプラントの先進国とわれているのでしょうか。その理由のひとつは日本と医療保険のシステムが異なるということです。アメリカで病気になり医者にかかれば、法外な費用を請求されます。歯の治療費も例外ではありません。日本のように健康保険の適応などという習慣がないからです。そのため予防医学が広く発達し、虫歯や歯並びの悪さも健康に悪影響を及ばすものとして、それを防ぐために歯列矯正などが一般化したわけです。それにあえて付け足すなら、ハリウッドという世界最大級のエンターテイメントの地域を擁するということもあるでしょう。白い歯を見せてニッコリ微笑むスターのほとんどは歯列矯正やホワイトニングをしています。また問題があれば抵抗感無くインプラントにします。こういったスターは、アメリカ人にとって格好のロールモデル(お手本)です。「なんでも噛めるよ、大丈夫だよ」と実証してくれたわけです。
こういった諸々の理由から、一般市民の間でも歯並びを良くすること、インプラントをいれるということはほぼ普遍的に行われる日常的な、ものになったのです。歯列矯正に関しては日本でも、ようやく矯正装置をはめている小学生が珍しくなくなりました。しかし一昔前は、いじめの原因だったりしたのです。一方アメリカでは歯列矯正を堂々と見せます。日本人があまり目立たないようにと歯の色に近い装置を選んだり、歯の裏側に装着したりすることと比べると、意識の違いに驚いてしまいます。矯正装置がひとつの自己主張でもあるのでしょう。またアメリカでは、ビジネスに成功するために肥満と悪い歯並びは大敵だといわれています。自己管理ができないとマイナスイメージにつながるからでしょうが、これら様々な理由がバックボーンとなって歯科医療が発達し、人類の夢であった第3の永久歯でもあるインプラントの研究が進んだということは決して不思議なことではありません。日本にもその考えが浸透するのも遠い未来ではありません。現在過渡期を迎えているのです。
インプラント治療がまだ主流とはいえない日本では、咀しゃく能力がほとんどなくても歯を残すという考えが強いようです。また合わない義歯を我慢して使い続け、すっかり骨がやせてしまった人も多いように見受けます。あなたの周囲に義歯の調整のためなどで延々と歯科医院へ通う続けている人はいませんか。たとえ何度調整を重ねたとしても、入歯をひっかけているクラスプという金属製のバネによって欠損病は進行し使える歯がどんどん少なくなるだけです。
ライオン歯科ではそういった進行性欠損病を生む原因であるブリッジや部分入歯など以外に、インプラントという選択肢があることに着目し安心して患者様の治療に取り入れているのは、歯骨や歯肉の移植再生治療がかなりスタンダードになってきたからです。骨折をすれば、その箇所をギブスで固めて動かないようにして安静にしますね。もはやこれは常識です。その理由を聞くと、誰でも「骨がくっつくから」と答えるでしょう。切り傷をしたらいつか切り傷はふさがり治ります。これらのことは歯骨や歯肉でも同じなのです。歯の再生が不可能なため、これらも同様に思っている人が多いかもしれませんが細胞がある限り再生能力はあるのです。反対に歯は削ってしまえば二度と再生しません。ここが大きな分岐点なのです。あなたにとって分かれ道は、そのまま歯科医院へ通い続けるのか、インプラントにして1回で決めるかです。どちらに進むかで、これからの人生はまったく異なるものになるでしょう。
初めてブローネマルク・システムによる治療を受けたのはヨスタ・ラーソン氏ですが、彼のインプラントは亡くなるまでの40年間、問題なく機能したそうです。当時のインプラントと現在のインプラント(即時負荷ができる)とはどこが異なっているのでしょうか。喪失した歯を人工歯根で補うという目的から考えると、たとえ40年前といってもそれは変わりません。しかし「インプラントを入れたその日から噛める」というオールオン4が開発された今、治療期間に短縮という決定的な相違点が生まれています。かつては「ブレードインプラント」という形のインプラントが使われていました。板状の形で歯骨に平行して埋入するというものでした。その後、形態は物理的に締めて止めることができるネジに改良されています。しかしあくまでも、それはぐらぐらしないように機械的に締めるという作業です。インプラントが骨と融合するまでにネジのプレッシャーが解けると多少緩んでしまいます。そこで力を発揮するのがインプラントの表面処理です。ネジ山をはじめ細胞と密着する前にザラザラとしたタイユナイト処理という加工をほどこし、無数の穴をあけています。ザラザラとさせることで表面積が増し再生細胞を取り込みやすいようにしたのです。また、ミクロ性状により、血中のタンパク質を吸着し血小板を活性化させて歯骨と一体化するスピードが非常に速くなりました。その結果、即時負荷(埋入した直後に負荷をかけること=食べ物を噛むこと)が可能になりました。つまりオールオン4に使用するインプラントの表面には、オッセオインテグレーションの複雑な過程を促進させる性質や状態が、最大限に結集されているのです。
これによって仮歯の装着が、手術当日に可能になったというわけです。骨創治療をは早めることによってインプラントの安定性が向上します。そして早期固定が得られることによって、インプラント治療の成功はより確かなものとなりました。だからこそ、たった4本(片顎につき。場合によっては4~8本)のインプラントで済むオールオン4が可能になったのです。また埋入本数の減少は、経済的な負担も軽くします。以前であればベンツを購入するかどちらかにするかと悩んでしまうほどのものが、ファミリーカー並になったのです。もちろんこれは喜ばしいことです。
現在のところノーベルバイオケア社のオールオン4がインプラントを使った、もっとも先端で信頼できる治療です。ノーベルバイオケア社は、世界中で利用されているインプラントを作っている企業であり、メーカーとして10年保証を謳っています。オールオン4は、ヨーロッパで高名な歯科医療の権威、ポール・マロ博士が考案したシステムです。見た目は美しく、腫れや痛みもなく、そして何より治療時間が短いことがオールオン4の特徴です。なるべくコストを低く抑え「一人でも多くの人が噛む喜びを再びあじわえるように」という願いを込めてこの方法を編み出したのです。それが欧米の成熟した市場で揉まれ、今では多くの歯を補うための技術として認められています。それをもっと日本にも広めたい、少しでも多くの人に知っていただきたいと言うのがライオン歯科の願いです。高齢化社会の到来を目前に控えた日本にはなによりも必要な技術といえます。この優れたインプラントシステムを広めるには我々の責務でもあるのです。
失った歯の数が多ければ多いほど、咬合力(噛み合わす力)が低下します。同時に握力が低下し、中には背骨が曲がっていかにも老け込んだ様子になる人もいます。しかし歯を失った影響はこれだけではありません。歯槽骨が退縮することで舌の形が変形したり言葉がしゃべりにくくなったりするのです。もし歯が抜けた原因が歯周病であれば、あなたはすでに生活習慣病になっている可能性もあります。例えば糖尿病の人は免疫力が低下しているために歯茎の炎症が起こりやすく歯周病になりやすいといわれていまし、歯周病の人は心臓血管系の疾患を引き起こしやすいとも言われています。つまり歯の喪失は、これら全身疾患と深い関わりがあるということです。他にも重度の歯周病菌が肺に感染して肺炎を引き起こした例や、低体重児の出産につながった例などがあり、歯周病の及ぼす影響は重大な結果を招きかねません。 その点インプラントを埋入するということは、歯周病になっている原因の歯そのものを抜いてしまうので、その後の歯周病の心配はありません。またインプラントで噛む力を取り戻し、さまざまなデメリットが改善できるのです。
即時加重(直ぐ噛めるということ)ができるオールオン4の施術に関するポイントはなんでしょう。それはインプラントに傾斜角度をつけて埋入することです。垂直ではなく角度をつけて埋入することで、より後方にインプラントのヘッドを出すことになります。すでに何度か説明をしていますが、前歯と臼歯の部位に埋入したインプラントヘッドの4点を結ぶと四角の面ができます。この面が広ければ広いほど安定した力で義歯を支えることになります。傾斜をつけてより奥にヘッドを出すことで最大限の面積を作るわけです。また、インプラントの表面加工も進化し骨と速やかに融合する工夫が凝らされていますから、仮歯をセットしたらすぐに噛める状態になるのです。ただしここで重要なポイントは、上・下顎に角度をつけて埋入する作業が、非常に繊細で適切な技術を要するということです。とくに上顎には頬骨や鼻腔があり、複雑な構造となっています。安全な手術を完璧に行うためには医師の技術だけでなく、医療施設の整備が絶対に必要です。つまりオールオン4の施術に関するポイントはCTスキャンの設置や滅菌室、麻酔システムなどの整備がかかせないということにあるのです。逆に言えば、それらのハード面が整った環境であれば安心して任せることができるというわけです。もちろん日々の技術の習得への努力というソフト面での充実も欠かせません。 手術を行うためには医師の技術だけでなく、手術を適切に行うために医療施設の整備が絶対に必要です。
CTスキャン設備のもたらした付加価値
オールオン4の施術には厳正な基準を満たした施設や設備が必要です。なぜならオールオン4が適応となる総義歯の人はほとんどがご高齢であり、細心の注意と適切な手術を行うための準備と、施設・環境が求められるからです。具体的には以下のような内容です。
ライオン歯科が導入した歯科用CTスキャンは、一般のCT機器と異なり、幅1ミリ以下の精度で断層撮影をします。
それによって骨内の様子や状況を外部から見ることができます。3D画像で立体的にも見ることができるので神経の位置や空洞を把握しつつ、どの角度にどの長さでインプラントを埋入できるのかを確実に判断できます。見えないところにドリルを勘でいれるのではなく、見えるところにドリルを入れるのです。CTスキャン画像があるのとないのとでは、安全性に天と地のほどの差があります。
もちろんCTスキャンがなければ他の医療施設で撮影することもできますが、そこへの移動時間や手間などを考えると持っているほうが便利です。特に埋入が困難なケースであればあるほど、すぐにチェックができる自医院での保有が必要です。ライオン歯科は設置していますが個人開業医での導入は珍しいかもしれません。
しかしフランスに同じ精度のCTスキャンがほんの3年前には数台しかなかったそうです。
このCTスキャンによって得た画像情報を使い、手術前にシュミレーションを行うことができます。実際にその様子を患者様にも見ていただきイフォームドコンセントに使用しています。おそらく、言葉や図を使うだけの説明よりもわかりやすく、理解しやすいものとなっているでしょう。患者様からも活発に質問が飛び出し、患者様の不安や心配を思いがけず知ることもあります。そういった付加価値もこの画像は生んでいます。もう手放すことはできません。
滅菌されたインプラント手術専用室です。必須条件のひとつです。
インプラント手術時に通常使用するのは局所麻酔ですが、これに「静脈内鎮静法」という方法を併用すると、手術中の意識が薄れてうとうとした感じになり、心身に与えるストレスを減少させることができ、不安を和らげた状態で手術を受けていただくことができます。 (完全に意識がなくなるのではなく、呼びかければ眠りから覚めます。) 静脈内鎮静法を併用したインプラントなどの手術に伴う全身管理は、歯科口腔外科領域における「全身麻酔」「鎮静法」「疼痛治療」等を専門に行う歯科麻酔医(日本歯科麻酔学会認定医)が担当し、より安全な麻酔法でインプラント手術を行います。また、手術中は最新の生体情報モニターを駆使し、脈拍・血圧・心電図・呼吸等の全身状態を厳重に監視しながら鎮静管理を行います。この方法により、高齢者の方の治療も可能となりました。
●静脈鎮静法 … 手術中の意識が薄れ、心身に与えるストレスを減少させることができ、より快適に、より安全に手術を受けることができます。
※この方法を使う場合は必ず歯科口腔外科領域における「全身麻酔」「鎮静法」「疼痛治療」等を専門に行う歯科麻酔医(日本歯科麻酔学会認定医)が担当します。
インプラントなどの手術に先がけ、歯科麻酔医随伴による診察(問診・血圧測定・胸部聴診 等)及び検査(尿・血液・心電図 等) を実施し、患者様各々の健康状態や体質などを考慮した管理計画を立てます。なおこれまでは中度以上の糖尿病などの場合は、しばらく治療を進めてからという診断でしたが、最近は数値によって、かえってインプラントにしたほうが糖尿病にも良い影響が出ることがわかっています。 つまり、よく噛むことで唾液が分泌され、少量の食べ物で満足感が得られるために体重が増加せず、体調が良くなるのです。
オールオン4も万能ではなく、顎骨の形態や骨量によっては、すぐにできない場合もあります。ご自分のケースはオールオン4が可能かどうか、どうぞ遠慮なくお尋ね下さい。通常のインプラントの適応となるか、オールオン4が適応できるか、多角的な検査から確実に診断いたします。
オールオン4の効果は、食べる喜びを取り戻すことばかりではありません。合わない義歯を長く使用してきたために生じた顔の歪みを矯正することもできます。いわば顔面整形も可能なのです。より審美性に重点を置いた治療もできます。
適切な技術と知識、経験を得る為の海外でのトレーニングや研修は特にインプラントのような進歩を続ける医療分野においては重要なものです。いえ絶対に必要と言っても良いでしょう。そのためには年に数回は必ず海外研修に出かけます。それには、スタッフも必ず同行します。手術に携わる者にとって、世界の最前線の治療を、自分の目で見て耳で聞くことが重要だと考えているからです。研修には世界中から歯科医が参加します。時には中継ネットで数ヶ所の研修会場を結び、手術の経過をリアルタイムで各会場へ向けて放送することもあります。つまりメインとなった会場での手術は世界各国で多くの参加者の見守る中で行われるというわけです。ある研修でライブ手術に参加したときは、なんと世界中で2000人もの参加者がブラウン管を通して見ていたそうです。私はメイン会場でしたから実際に目の前でその経過を見ることができました。それは非常に参考になりますし、技術の向上はもちろんのこと、意識の上でも良い刺激を受けます。文字や写真だけの知識では得られない生の体験は、何ものにも勝る学習ということです。スタッフたちもそういった機会を重ねることで、患者様からの質問に具体的に即答できます。患者様への細やかなフォローとしても非常に大切なことだと思います。さらにもう一つ、トレーニングを受けることの重要なポイントがあります。メンバーが研修で新しい情報をキャッチすると、すぐさまグループ内において徹底されるということです。その情報によって昨日までのものをすぐさまレベルアップのために脱ぎ捨てなければならないこともあるかもしれません。その覚悟で私はトレーニングを受けています。だからこそ、患者様それぞれに合わせたインプラント治療を皆様に提供できるのです。もちろんオールオン4にも自信をもっています。お任せ下さい。